第2部 現代編 2020–2029
2020〜2025年は実績、2026年は現在進行形、2027〜2029年は短期予測(根拠→推論の2段構造)です。
2020実績
コロナショック ― 強制リセットと専売ECの誕生
メニュー来店周期の長期化でセルフカラーが急増する一方、「久々の来店でまとめてケア」が髪質改善の追い風に。マスク生活でインナーカラー(イヤリングカラー)が大流行
ほかの軸を読む(3件)
- 商品在宅時間増で「おうち美容」が拡大。ヘアオイル・ヘアマスクの単価上昇が始まる
- 流通ミルボンが2020年6月「milbon:iD」開始。「売上はカウンセリングしたサロンに還元」という設計で、サロン専売×ECの矛盾を制度的に解いた歴史的転換点
- データ美容所数25万7,890軒(令和2年度末)。コロナ禍でも増加(前年比+3,468軒)
出典:厚生労働省「衛生行政報告例」、ミルボン公表情報
2021実績
巣ごもり明けの回復と韓国波の本格上陸
メニューヨシンモリ・くびれヘアなど韓国発スタイルが主流化。レイヤーカットが約20年ぶりに本格復権。髪質改善が地方サロンまで浸透し全国区の基幹メニューへ
ほかの軸を読む(2件)
- 商品マス市場で1,500円超の高価格帯シャンプーが次々ヒットし、ドラッグストア棚の高単価化が進行。韓国ヘアケアが存在感を拡大
- データヘアケア・ヘアメイク市場5,925億円(前年比+2.7%)。美容所数26万4,223軒。人手不足感が顕在化
出典:富士経済プレスリリース、厚生労働省「衛生行政報告例」
2022実績
円安・値上げ元年 ― コスト構造の地殻変動
商品ケアブリーチ(ボンド系処理剤併用)が標準化し「ブリーチ=特殊」から「選択肢の一つ」へ。サステナブル対応(詰め替え・バイオマス容器)が商品開発の必須要件に
ほかの軸を読む(3件)
- 技術酸性ストレート(低アルカリ矯正)が拡大し、髪質改善メニューの技術が多層化
- 流通急激な円安と資源高で値上げラッシュ開始。転嫁が難しいサロンの収益が圧迫され始める(のちの倒産増の伏線)
- データ市場6,665億円(前年比+4.2%)。美容所数26万9,889軒、従業美容師数57万1,810人
出典:富士経済プレスリリース、厚生労働省「衛生行政報告例」
2023実績
5類移行と二極化の始まり
メニュー外出再開で「ちゃんと綺麗にする」需要が回復。一方、来店周期はコロナ前より長いままで「1回あたり単価を上げる経営」への転換が必須に
ほかの軸を読む(3件)
- 商品「スキニフィケーション(ヘアケアのスキンケア化)」がキーワードに。頭皮ケア・美容液発想が高価格帯を牽引
- 流通ミルボン売上高477億円で過去最高(milbon:iD会員67万人・EC売上16.4億円、前年比+42.6%)。ディーラー業界でM&A・再編が進行
- データ美容所数27万4,070施設で過去最高更新。一方、美容室倒産は年度182件と過去最多。「総数は増えるが淘汰も最多」という二極化構造が数字で確定
出典:厚生労働省「衛生行政報告例」、帝国データバンク、ミルボン決算資料
2024実績
三重苦の表面化 ― 倒産最多と高価格化の同時進行
サロン美容室倒産が2024年度197件(2月時点)で過去最多を大幅更新(暦年ベースでは215件)。要因は「人手不足」「コスト高」「競争激化」の三重苦。美容室の約3割が赤字経営
ほかの軸を読む(4件)
- 商品大手が高価格帯(2,000〜3,000円超)でマス市場へ続々参入し「高価格帯マス」という新ゾーンが確立。サロン店販品との価格差がほぼ消失
- 流通専売メーカーの競争軸が「商品力」から「サロンの経営支援力」へ移行(スマートサロン戦略等)
- データ市場6,906億円見込(前年比+2.1%)。数量でなく単価が成長を牽引。美容資材価格は5年間で約14〜16%上昇
- データ(2026年9月更新)美容所数27万7,752軒(令和6年度末・前年比+3,682軒/+1.3%)、従業美容師数58万8,291人(+8,523人/+1.5%)で、ともに5年連続の過去最高更新。一方で理容所は10万7,995軒(−2.1%)と減少が続く
出典:帝国データバンク、富士経済プレスリリース、ミルボン公表情報、厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」(2025年10月21日公表)
2025実績
髪質改善の成熟と「次」の模索
メニュー髪質改善人気は健在。ただし登場から約8年でサロン間の技術差・価格差が拡大し、コモディティ化の入口に(法則6「高単価メニュー約10年周期」がカウントダウン段階)
ほかの軸を読む(4件)
- サロン倒産は2025年通年で235件(前年215件)と2年連続で過去最多を更新。人手不足を直接要因とする倒産も11件と調査開始以降で最多。倒産の9割超が資本金1,000万円未満、約半数(49.0%)が設立10年未満で、「新しく小さい店から消える」構図が数字で確定。フリーランス化・スタッフ流出が経営リスクとして明確化
- データヘアケア・ヘアメイク市場は2025年見込7,096億円(前年比+2.6%・富士経済)。スキンケアの成分・手法を取り入れる「スキニフィケーション」を背景に、成分・浸透技術を打ち出した高単価インバスケア(家庭用インバストリートメント791億円・+6.2%)が牽引
- 商品エイジングケア・頭皮ケアラインの拡充が専売各社で加速(白髪・うねり・ボリュームが商品開発の中心テーマへ)
- 流通milbon:iD会員100万人を1年前倒しで突破。専売ECが「実験」から「標準インフラ」へ。専売最大手は海外・EC・経営支援へ軸足を移す構図
出典:ホットペッパービューティーアカデミー、帝国データバンク「美容室の倒産動向(2025年)」(2026年1月6日公表)、富士経済プレスリリース(2025年7月23日)、ミルボン決算資料
2026現在進行形
いま動いている論点(2026年9月時点)
メニュー髪質改善の次を巡る競争が表面化。「白髪ぼかしハイライト」「エイジング毛対応」「頭皮×髪のトータル診断」など40〜60代を主役にした高単価メニュー開発が各社のテーマに
ほかの軸を読む(4件)
- 処理剤ボンド系第2世代(多機能化・カラー剤への内蔵化)と酸熱系の改良が並走。「処理剤がメニューに内蔵され、見えなくなる」流れに注意
- 流通価格改定は2026年も継続中。ディーラーは「経営コンサル+採用支援+DX支援」へ業態転換できるかが分水嶺
- グローバル韓国・中国ブランドの日本攻勢と、日本専売ブランドのアジア輸出が双方向で拡大(「輸入」だけでなく「輸出」局面に)
- 実測(2026年9月追記)2025年の統計が出そろい、「軒数は増え続け(+1.3%)、倒産も過去最多(235件)」という二極化がさらに進んだ。美容所数はまだプラスなので🟢ベースシナリオの入口(マイナス転換)には未到達。早期警戒指標の現在値は未来編の判定表に追記
2027予測
短期予測:ピークアウト議論とエイジング転換の始まり
予測①美容所数の増勢が明確に鈍化し、ピークアウト議論が始まる
根拠:倒産2年連続最多更新・赤字3割。新規参入が淘汰を上回る構図は人手不足と開業コスト上昇で持続困難
ほかの軸を読む(2件)
- 予測②「エイジングケア」が髪質改善に代わる集客ワードへ
根拠:白髪・うねり・ボリューム低下は人口動態的に拡大が確実。各社のエイジングライン拡充は先行投資段階で、メニュー体系化の完成が2027年前後と推定 - 予測③AIカウンセリングの店頭標準化が始まる
根拠:肌診断機のエステ普及と同じ普及曲線を髪・頭皮診断がたどると想定。診断データは店販・EC連動の起点になる注意(2026年8月追記):「導入」と「定着」は別物。行政では約10億円をかけた虐待リスク判定AIが実証で約6割のケースに判定疑義が生じ、2025年に導入見送りとなった例がある(こども家庭庁・各紙報道)。企業の生成AIパイロットの95%が測定可能な損益効果を出せていないという調査もある(MIT NANDA 2025)。店頭AIカウンセリングの普及は「設置台数」ではなく「施術・店販への接続率(定着)」で評価すべき。
2028予測
短期予測:高価格帯マスvs専売の最終戦争
予測④「価格帯では区別不能」が完成。残る専売の差別化は「施術連動・診断・美容師推奨」のみで、ここを制度設計できないメーカーは店販を失う
ほかの軸を読む(2件)
- 予測⑤ディーラー再編の最終局面(上位集約・異業種参入)。教育のオンライン化が完了し、物流専業型ディーラーの存在意義が消失する
- 予測⑥パーマの再評価(小規模リバイバル)。質感の振り子法則+熱ダメージ回避ニーズ+低ダメージパーマ剤技術の成熟
2029予測
短期予測:顧客単位が「サロン」から「美容師個人」へ
予測⑦美容師の「個人事業主比率」が業界統計の主要論点に。専売メーカー・ディーラーの顧客単位が移る転換点
ほかの軸を読む(2件)
- 予測⑧処理剤市場の第5世代化(内蔵型・診断連動型)。ダメージ主因は「ブリーチ」から「加齢×熱の複合」へ移行中
- 予測⑨「美容所数30万 vs 美容師数頭打ち」のねじれが政策課題化。1店舗あたり従業者数の低下(小規模化)が極限に
現代編 総括
2020年代に起きた5つの構造転換
- 専売ECの制度化(サロン還元モデル)により「専売とECは矛盾する」という30年来の前提が消滅した
- 価格による棲み分けの完全消滅。専売の独自性は「診断・施術連動・美容師の推奨」という無形価値だけになった
- サロンの二極化が統計で確定。「平均的なサロン」向けの商品・営業は成立しなくなった
- 美容のリファレンスが韓国へ。スタイル・商品・評価軸のすべてで韓国が参照点になった
- コスト構造の恒常的悪化。「値上げできる商品・メニュー設計」が企画の前提条件になった